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東京地方裁判所 昭和57年(行ウ)95号 判決 1989年11月21日

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五三年一二月二六日付けで原告の昭和四八年二月一日から昭和四九年一月三一日まで、昭和四九年二月一日から昭和五〇年一月三一日まで及び昭和五一年二月一日から昭和五二年一月三一日までの各事業年度の法人税についてした更正及び重加算税の賦課決定並びに昭和五一年二月一日から昭和五二年一月三一日までの事業年度の法人税についてした過少申告加算税の賦課決定を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告の昭和四八年二月一日から昭和四九年一月三一日までの事業年度(以下「昭和四九年一月期」という。)、昭和四九年二月一日から昭和五〇年一月三一日までの事業年度(以下「昭和五〇年一月期」という。)及び昭和五一年二月一日から昭和五二年一月三一日までの事業年度(以下「昭和五二年一月期」といい、右三事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の更正等の経緯は別表一ないし三記載のとおりである(以下、右各更正(但し、昭和五二年一月期については昭和五四年八月三日付けの再更正で減額された当初更正。以下同じ)を「本件各更正」、右各重加算税賦課決定を「本件各重加算税賦課決定」、右過少申告加算税賦課決定(但し、昭和五四年八月三日付け過少申告加算税賦課決定で減額された当初賦課決定。以下同じ)を「本件過少申告加算税賦課決定」、本件各重加算税賦課決定及び本件過少申告加算税賦課決定を併せて「本件各決定」という。)。

2  しかしながら、本件各更正には原告の所得金額を過大に認定した違法があり、したがって、これを前提としてされた本件各決定も違法である。

よって、原告は右各処分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認めるが、同2は争う。

三  被告の主張

1  本件各更正の適法性

原告の本件各事業年度の所得金額は、次に述べるとおり、昭和四九年一月期は一七二八万四六六六円、昭和五〇年一月期は一二九八万三七二六円、昭和五二年一月期は六九四四万五五三九円であるところ、本件各更正における所得金額は右金額の範囲内であるから、本件各更正は適法である。

(一) 昭和四九年一月期

当期の原告の所得金額は次表のとおりである。<表省略>

右表の各区分の内容は次のとおりである。

(1) 申告所得金額 △九四五万三五七四円

原告が昭和四九年四月一日付けで被告に提出した当期分の法人税の期限内確定申告書に記載された金額である。

(2) 土地売却益計上もれ 二〇二六万〇八〇〇円

原告は、当期において訴外林友定(以下「訴外林」という。)に対し、東京都新宿区東大久保二丁目四〇番地所在の土地(一二六・六三坪)、建物(一階一〇四・五〇坪、二階三六・六九坪。以下、右土地建物を「東大久保の土地建物」という。)を七五九七万八〇〇〇円で売却したにもかかわらず、これを五五七一万七二〇〇円で売却したとして確定申告を行っていたので、右の差額二〇二六万〇八〇〇円を所得金額に加算したものである。

(3) 雑収入計上もれ 八一四万九七九九円

原告は、訴外伊藤喜一郎(伊藤管財商会の代表者)所有の土地、家屋に設定していた根抵当権の実行に伴う配当金(東京地方裁判所昭和四七年(ケ)第一四号不動産競売事件の配当金)八一四万九七九九円を昭和四八年四月一二日付けで東京地方裁判所より受領したのであるから、これを益金に算入すべきであるにもかかわらず、除外して確定申告を行っていたので、右金額を所得金額に加算したものである。

(4) 貸倒損失否認 六七八万七三五七円

原告は、訴外平山機械製作所(以下「平山機械」という。)に対する債権六七八万七三五七円(内訳、仮払金一二万四九九九円、未収入金一七万七九九九円、受取手形六四八万四三五九円)について、貸倒れの事実があったとしてこれを損金に算入していたが、これらの債権は、原告から訴外宮下雄幸(以下「訴外宮下」という。)に対し譲渡されており、貸倒れは発生していないことから右六七八万七三五七円の損金算入を否認し所得金額に加算したものである。

(5) 雑損失認容 一一五万八六三四円

原告が訴外伊藤管財商会に対して有していた売掛金一一五万八六三四円は前記不動産競売配当金八一四万九七九九円に包含されて回収されたので右売掛金相当額を雑損失と認容して当期の損金に算入したものである。

(6) 繰越欠損金の損金算入額 七三〇万一〇八二円

原告は青色申告法人であるから、昭和四六年二月一日から昭和四七年一月三一日までの事業年度の繰越欠損金二九六万二七七一円及び昭和四七年二月一日から昭和四八年一月三一日までの事業年度の繰越欠損金四三三万八三一一円の合計金額七三〇万一〇八二円を当期の損金として認容したものである。

(二) 昭和五〇年一月期

当期の原告の所得金額は次表のとおりである。<表省略>

右表の各区分の内容は次のとおりである。

(1) 申告所得金額 △六八七万七一九二円

原告が昭和五〇年三月三一日付けで被告に提出した当期分の法人税の確定申告書に記載された所得金額である。

(2) 貸倒損失否認 二一八〇万円

原告は、訴外関東鋼管株式会社(以下「関東鋼管」という。)に対し、昭和四八年五月二〇日に二〇〇万円、同月三〇日に五八〇万円、同年六月三〇日に一四〇〇万円の合計二一八〇万円を貸し付け、その見返りとして同年七月三一日に受領した約束手形一通(額面金額二一八〇万円、振出人関東鋼管、振出日記載なし、支払期日昭和四九年七月三一日、支払場所新潟相互銀行高崎支店。以下「本件第一約束手形」という。)が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していた。

しかしながら、原告が関東鋼管に右の貸付けを行ったとの事実及び右約束手形振出の事実は全く認められないので右貸倒損失の損金算入を否認し所得金額に加算したものである。

(3) 事業税認定損 一九三万九〇八〇円

昭和四九年一月期の法人税の更正に伴い、当期に損金算入が認められる昭和四九年一月期の事業税の額であり、その計算明細は別表四記載のとおりである。

(4) 所得税額過大計上 二円

前記(1)の所得金額の計算上、益金に算入すべき法人税額から控除される所得税額は三四万七一七八円であるところ、原告は三四万七一八〇円を所得金額に加算しており、差額二円が益金の額に過大に算入されているので、右金額を減算したものである。

(三) 昭和五二年一月期

当期の原告の所得金額は次表のとおりである。

右表の各区分の内容は次のとおりである。

(1)申告所得金額 〇円

原告が昭和五二年三月三〇日付けで被告に提出した当期分の確定申告書に記載された所得金額である。

(2) 貸倒損失否認 五八三一万五五二八円

<1> 関東鋼管に対する貸倒損失(不渡手形分) 二〇〇〇万円

原告は、関東鋼管に対する貸付金二〇〇〇万円の見返りとして同社から受領した約束手形一通(額面金額二〇〇〇万円、振出人関東鋼管、振出日昭和四八年九月二〇日、支払場所群馬銀行高崎支店。以下「本件第二約束手形」という。)が不渡りとなり、貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していた。

しかしながら、原告は、訴外兼松江商株式会社(以下「兼松江商」という。)から同社の関東鋼管に対する一〇〇〇万円の売掛金元本債権及びこれに対する昭和四八年六月一〇日から支払済みまで日歩五銭の割合による遅延損害金債権(以下「本件譲渡債権」という。)の譲渡を受けたものの、右債権は関東鋼管所有の機械設備等によって実質的に弁済されて消滅したというべきであるし、仮に、右債権が当期において存在したとしても、右債権の担保として関東鋼管の代表取締役竹森陽一郎(以下「訴外竹森」という。)の所有する土地建物(高崎市石原町三五四八番地六一及び同町三六一八番地所在。以下「石原町の土地建物」という。)に根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)が設定されている事実が認められるうえ、昭和五〇年七月八日付けの前橋地方裁判所に対する右土地建物の競売手続の開始の申立てを初めとする右債権の取立てをめぐる一連の訴訟においても関東鋼管に対する債権の存在を主張しており、右訴訟が当期末現在係争中であることからも右債権につき貸倒れが発生したものとは認められないし、その余の債権の発生は認められず、また、仮に、その余の債権が当期において存在したとしても、右と同様の理由により当期において貸倒れが発生したものとは認められないことから、右貸倒損失の損金算入を否認し所得金額に加算したものである。

<2> 関東鋼管に対する貸倒損失(現金による貸付金分) 五〇万円

原告は、関東鋼管に対する昭和四八年七月六日付けの貸付金五〇万円について回収不能を理由に貸倒損失に計上していた。

しかしながら、原告が関東鋼管に対して右の貸付けを行ったとの事実は全く認められないので、右貸倒損失の損金算入を否認し所得金額に加算したものである。

<3> 高晴工業株式会社に対する貸倒損失<不渡手形分> 三七八一万五五二八円

原告は、訴外高晴工業株式会社(以下「高晴工業」という。)から貸付金三七八一万五五二八円の見返りとして昭和四八年七月三一日に受領した約束手形一通(額面金額一七九一万八三九七円、振出人高晴工業、振出日記載なし、支払期日昭和四九年一月三一日、支払場所新潟相互銀行高崎支店。以下「本件第三約束手形」という。)及び昭和四八年九月三〇日に受領した約束手形一通(額面金額一九八九万七一三一円、振出人高晴工業、振出日記載なし、支払期日昭和四九年一月三一日、支払場所新潟相互銀行高崎支店。以下「本件第四約束手形」という。)が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していた。

しかしながら、原告が高晴工業に右貸付金を有するとの事実及び右二通の約束手形振出の事実は全く認められないので、右貸倒損失の損金算入を否認し所得金額に加算したものである。

(3) 敷金等の償却費相当額の収入もれ 七三万八五六〇円

原告が貸室賃貸借契約に基づき賃借人九名から受け入れた敷金等のうち別表五記載の償却費相当額七三万八五六〇円は、右賃貸借契約上、契約が締結され、貸室の引渡しが行われた時点で返還を要しない性質の金員となるのであるから、当期の収益に計上さるべきものとして所得金額に加算したものである。

(4) 繰越欠損金の過大控除額 一〇三九万一四五一円

原告は前記(1)の所得金額の計算にあたり、当期の所得金額から一六五〇万七七一七円の繰越欠損金を控除していたが、前期までの更正によって、原告が繰越欠損金として当期の損金の額に算入できる金額は六一一万六二六六円であるから、その差額一〇三九万一四五一円の損金算入を否認し所得金額に加算したものである。

2  本件各決定の適法性

(一) 本件各重加算税賦課決定の適法性

原告が虚偽の不動産売買契約書を作成し土地の譲渡代金の一部を除外して隠ぺいしたこと、債権を譲渡しているにもかかわらずこれを貸倒損失と仮装して隠ぺいしたこと、競売事件配当金を受領しているにもかかわらず全額控除して隠ぺいしたこと及びあたかも貸付金が存在したかのごとく会計帳簿を仮装したうえで当該貸付金額を貸倒損失として隠ぺいしたことは、課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し、その隠ぺいし又は仮装したところに基づき確定申告書を提出したことにほかならないので国税通則法(昭和五九年法律第五号による改正前のもの。以下同じ)六八条一項の規定に基づき、別表六の(一)のとおり昭和四九年一月期は一八二万六七〇〇円、昭和五〇年一月期は一三四万一九〇〇円、昭和五二年一月期は五八四万四六〇〇円の重加算税をそれぞれ賦課決定したものであり、本件各重加算税賦課決定は適法である。

(二)本件過少申告加算税賦課決定の適法性

前記1(三)(2)<1>及び1(三)(3)で述べた事実は、確定申告にあたりその計算の基礎とされていないことがあきらかであり、国税通則法六五条一項の規定に基づき、別表六の(二)のとおり、三七万二七〇〇円の過少申告加算税を賦課決定したもので、本件過少申告加算税賦課決定は適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1の冒頭の主張は争う。

同(一)の冒頭の主張のうち、申告所得金額、雑損失認容及び繰越欠損金の損金算入額については認めるが、その余は争う。

同(一)(1)は認める。

同(一)(2)のうち、原告が当期において訴外林に対し東大久保の土地建物を売却したこと及び原告が右土地建物を五五七一万七二〇〇円で売却したとして確定申告を行っていたことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。右土地建物の売却代金は原告の申告どおり五五七一万七二〇〇円である。

同(一)(3)のうち、原告が配当金八一四万九七九九円を東京地方裁判所から受領したこと及び原告が右配当金を除外して確定申告をしたことは認めるが、主張は争う。

同(一)(4)のうち、原告が平山機械に対する債権六七八万七三五七円(内訳、仮払金一二万四九九九円、未収入金一七万七九九九円、受取手形六四八万四三五九円)について貸倒れの事実があったとしてこれを損金に算入していたこと及び原告が訴外宮下に対して右債権を譲渡する旨の意思表示をしたことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。

同(一)(5)及び(6)は認める。

同(二)の冒頭の主張のうち、申告所得金額については認めるが、その余は争う。

同(二)(1)は認める。

同(二)(2)のうち、原告が関東鋼管に対し昭和四八年五月二〇日に二〇〇万円、同月三〇日に五八〇万円、同年六月三〇日に一四〇〇万円の合計二一八〇万円を貸し付け、その見返りとして同年七月三一日に受領した本件第一約束手形が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していたことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。

同(二)(3)及び(4)は争う。

同(三)の冒頭の主張のうち、申告所得金額は認めるが、その余は争う。

同(三)(1)は認める。

同(三)(2)<1>のうち、原告が関東鋼管に対する貸付金二〇〇〇万円の見返りとして同社から受領した本件第二約束手形が不渡りとなり、貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していたこと、原告が兼松江商から本件譲受債権を譲り受けたこと、右債権の担保として関東鋼管の代表取締役訴外竹森の所有する石原町の土地建物に本件根抵当権が設定されていたこと、原告が昭和五〇年七月八日付けの前橋地方裁判所に対する右土地建物の競売手続の開始の申立てを初めとする右債権の取立てをめぐる一連の訴訟においても関東鋼管に対する債権の存在を主張しており、右訴訟が当期末現在係争中であったこと及び右二〇〇〇万円のうち一〇〇万円については貸倒れが発生していないことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。

同(三)(2)<2>のうち、原告が関東鋼管に対する昭和四八年七月六日付けの貸付金五〇万円について回収不能を理由に貸倒損失に計上していたことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。

同(三)(2)<3>のうち、原告が高晴工業から貸付金三七八一万五五二八円の見返りとして昭和四八年七月三一日に受領した本件第三約束手形及び昭和四八年九月三〇日に受領した本件第四約束手形が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していたことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。

同(三)(3)のうち、原告が貸室賃貸借契約に基づき賃借人九名から別表五記載のとおり敷金等を受け入れたことは認めるが、その余は争う。

同(三)(4)のうち、原告が申告所得金額の計算にあたり、当期の所得金額から一六五〇万七七一七円の繰越欠損金を控除したことは認めるが、その余は争う。

2  同2(一)の事実は否認し、主張は争う。

同2(二)の事実は否認し、主張は争う。

五  原告の反論

1  雑収入計上もれ(被告の主張1(一)(3))について

原告が配当金を除外して確定申告をしたのは、右配当金を受領した後に右金員が行方不明になったためであり、本来であれば、右配当金を益金に計上し、同額の損金を計上すべきであったが、その手間を省いただけである。

2  平山機械に対する貸倒損失否認(被告の主張1(一)(4))について

(一) 原告は、訴訟対策上、被告が貸倒損失を否認している債権を訴外宮下に譲渡する旨の意思表示をしたが、右債権譲渡の意思表示は通謀虚偽表示で無効である。

(二) 原告は、右債権のうち六四八万四三五九円については、昭和四九年四月二三日付け債権放棄通知書によって、平山機械に対し右債権を放棄する旨の意思表示をしたのであるから、右債権放棄の時点で回収不能が確定したというべきである。

(三)また、原告は、右債権のうち三〇万二九九八円(仮払金一二万四九九九円、未収入金一七万七九九九円)については、前項の債権放棄後間もなく平山機械に対して口頭により債権放棄をしたから、右金額の損金算入を認めるべきである。

3  関東鋼管及び高晴工業に対する貸倒損失否認(被告の主張1(二)(2)及び1(三)(2)<1>ないし<3>)について

(一)前橋地方裁判所高崎支部昭和五一年(手ワ)第二四号事件、昭和五一年(ワ)第一三四号事件(以下「別件訴訟」という。)において原告と関東鋼管、訴外竹森及び高晴工業との間で昭和六〇年一二月二四日に別紙和解条項(以下「本件和解条項」という。)記載のとおりの内容の和解(以下「本件和解」という。)が成立した。右和解は、裁判官及び裁判所書記官の立会のもとにされた当事者の陳述に基づいて成立したものであるから、本件和解の内容に従って課税すべきである。そして、本件和解の内容によれば、次に記載した貸倒損失は認められるべきである。

(二) 昭和五〇年一月期

原告は、関東鋼管に対して昭和四八年五月二〇日に二〇〇万円、同月三〇日に五八〇万円、同年六月三〇日に一四〇〇万円の合計二一八〇万円を貸し付け、その見返りとして同年七月三一日に受領した本件第一約束手形が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなった。したがって、右二一八〇万円の損失算入を認めるべきである。

(三) 昭和五二年一月期

(1) 不渡手形分二〇〇〇万円について

(主位的主張)

<1> 原告は、昭和四八年六月二九日に兼松江商に九七〇万円を支払って、連帯した関東鋼管等に対して本件譲受債権を取得し、また、連帯した関東鋼管等のために昭和四八年六月二五日ころから同年一〇月二五日までの間に、少なくとも一〇三〇万円を超える立替金若しくは貸付金を支払い、同額の金銭支払請求権を取得し、さらに、連帯した関東鋼管等に対して昭和四八年四月二〇日及び同月三〇日に各五〇〇万円を貸し付け、同額の債権を取得した。関東鋼管は、右三口の債権担保のため、昭和四八年六月二九日に本件第二約束手形を原告宛に振り出し、交付した。その後、原告と関東鋼管は右の債権の存在をめぐって別件訴訟で争ったが、結局本件和解が成立し、そこにおいて関東鋼管は右の債権のうち二〇〇〇万円の約束手形金債権及び右金額を限度とする原因債権の発生と存在を認めた。

<2> 原告は、右二〇〇〇万円の債権のうち一〇〇万円は回収したが、関東鋼管は倒産しており、残額一九〇〇万円を支払う能力がない。

<3> したがって、右一九〇〇万円については、貸倒損失として損金算入を認めるべきである。

(予備的主張)

関東鋼管は、原告と連帯関係にあった訴外汎洋宏業株式会社(以下「汎洋宏業」という。)が関東鋼管所有の機械を逸失させたりしたことによって一九〇〇万円の損害賠償請求債権を取得したので、右債権を自働債権とし、原告が関東鋼管等に対して有していた二〇〇〇万円の債権と、対当額一九〇〇万円の範囲で相殺した。その結果、原告は汎洋宏業に対して一九〇〇万円の求償権を取得したが、汎洋宏業には資産がなく、支払能力もない。したがって、右一九〇〇万円については、貸倒損失として損金算入を認めるべきである。

(2) 現金による貸付金分五〇万円について

原告は、関東鋼管に対して昭和四八年七月六日に五〇万円を貸し渡したが、関東鋼管が倒産したため、右貸付金を回収することは不可能になっている。したがって、右五〇万円については、貸倒損失として損金算入を認めるべきである。

(3) 高晴工業に対する貸倒損失について

原告は、高晴工業に対して昭和四八年七月三一日に一七九一万八三九七円、同年九月三〇日に一九八九万七一三一円の合計三七八一万五五二八円を貸し渡したが、右貸付金を回収することは不能となっている。したがって、右三七八一万五五二八円については、貸倒損失として損金算入を認めるべきである。

4  敷金等の償却費相当額の収入もれ(被告の主張1(三)(3))について

敷金の償却費相当額は、賃貸借契約成立後における賃借人による賃借物の使用可能状態の継続に関して授受されるものであるから、賃借物の使用可能状態が賃貸借期間満了時まで継続した場合には返還が不要となるが、例えば、賃貸人の責に帰すべき事由により、賃借物の使用が不能となった場合には、敷金の一部償却は実施されないのである。したがって、敷金等の償却費相当額は、当該関係貸室賃貸借契約の終了時に収益として確定するのであるから、昭和五二年一月期の所得金額に加算すべきではない。

六  原告の反論に対する認否

1  原告の反論1は争う。仮に配当金が受領後に行方不明になったとしても、それは原告の内部的な問題であって、そのことが直ちに雑収入計上もれの認定と関係するものではない。

2  同2(一)の事実は否認する。

同(二)及び(三)は争う。

3  同3(一)のうち、原告が兼松江商から本件譲受債権を譲り受けたこと、別件訴訟において原告と関東鋼管らとの間で昭和六〇年一二月二四日に本件和解が成立したこと及びその和解条項が別紙和解条項記載のとおりであることは認めるが、その余は争う。

訴訟上の和解は確定判決と同一の効力を有するところ、仮に右効力の中に既判力が含まれているとしても、過去の権利関係の存否についてまで既判力が及ぶはずはない上、そもそも当事者を異にする訴訟において確定判決と同一の効力をいってみても何の意味もない。また、本件和解には過去の事実を確認する条項が含まれているが、和解とは過去における事実を確認するものではなく、過去の事実がいかなるものであったかはともかくとして、和解当事者の互譲により現在の債権債務を確定するものであるから、和解条項に過去の事実を記載しても無意味な記載であり、和解当事者の債権債務に影響を及ぼさないのであって、和解調書に過去の事実を確認する記載があったとしても、それだけではその記載内容が事実であるということはできない。

同3(二)及び(三)は争う。

4  同4は争う。

第三  証拠<省略>

理由

一  請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件各更正に原告の所得金額を過大に認定した違法があるかどうかについて検討する。

1  被告の主張1(一)のうち、(1)(申告所得金額)、(5)(雑損失認容)及び(6)(繰越欠損金の損金算入額)、同1(二)のうち(1)(申告所得金額)並びに同1(三)のうち(1)(申告所得金額)については、当事者間に争いがない。

2  土地売却益計上もれ(被告の主張1(一)(2))について

(一)  原告が当期において訴外林に対し東大久保の土地建物を売却したこと及び原告が右土地建物を五五七一万七二〇〇円で売却したとして確定申告を行っていたことは、当事者間に争いがない。

(二)  被告は、東大久保の土地建物の売買代金額は七五九七万八〇〇〇円であった旨を主張するので検討する。

<証拠>によれば、訴外林は、昭和四七年暮れ頃、東大久保の土地建物を坪当たり六〇万円で買う話がまとまったが、その後、訴外宮下から契約書上は坪当たり四四万円、総額五五七一万七二〇〇円とし、二〇二六万〇八〇〇円を裏金とするよう申し入れがあったので、これを了承し、昭和四八年一月二五日に売買契約書を作成した際に、訴外林の次男林悦夫立会のもとに、株式会社八十二銀行から二〇〇〇万円を借り入れ、これに手持ちの現金を加えて用意した右の裏金を訴外宮下に支払った旨を記載した申述書を被告宛に提出し、林悦夫も、右の裏金を手渡した際には同席していた旨を記載した申述書を被告宛に提出していること及び東大久保の土地建物の売買を仲介した権並勇は、東大久保の土地建物は売買契約書では売買代金額は五五七一万七二〇〇円とされているが、実際には七五九七万八〇〇〇円で取引されたものであり、二〇二六万〇八〇〇円が支払われた時には席をはずしたが、訴外林が右金員を持参し、訴外宮下に支払ったことは間違いがない旨を記載した申述書を被告宛に提出していることが認められるところ、<証拠>によれば、東大久保の土地を売却する旨の広告において、当初は売買代金額を一坪当たり七五万円くらいとしていたが、その後七〇万円くらいに下げられ、最後に出された広告ビラには、「坪六〇万仕切」と記載されていたこと、訴外林は、昭和四八年一月二四日に定期預金を担保として株式会社八十二銀行から二〇〇〇万円を借り入れたこと及び訴外林の代理人権並勇は、原告に対して、東大久保の土地建物の売買について、土地の面積が不足していたとして、一坪当たりの売買代金額が六〇万円であるとして算出した金員の返還を請求したことを認めることができ、また、<証拠>によれば、東大久保の土地建物は原告の事務所として昭和四五年ころまで使用されていたが、小平市花小金井所在の土地の売却によって得られた資金で第一汎洋ビルを建設し、事務所をそのビルに移したため不要となっていたものであること及び訴外林は、当時事業のために使用していた土地が区画整理の対象となり、一定の期限内に買替用地を見付けないと支障が生じる状況であったことが認められ、右認定の事実によれば、原告よりは訴外林のほうが東大久保の土地建物の売買契約を急ぐ事情にあったということができるのであって、これらの事情に鑑みると、訴外林、林悦夫及び権並勇の前記申述書の記載内容は信用することができるものというべきである。原告代表者は、売買代金額は契約書記載のとおりで、裏金はなかった旨を供述するが、右供述は前掲各証拠に照らし採用できない。また、<証拠>によれば、原告と訴外林の間には土地の面積が足りないということをめぐって紛争があったことが認められるが、右事実も前期認定を覆すに足りない。

(三)  右に判示したところによれば、東大久保の土地建物の売買代金額は一坪当たり六〇万円、総額七五九七万八〇〇〇円であったということができる。したがって、二〇二六万〇八〇〇円の土地売却益計上もれがあるというべきである。

3  雑収入計上もれ(被告の主張1(一)(3))について

(一)  原告が配当金八一四万九七九九円を東京地方裁判所から受領したこと及び原告が右配当金を除外して確定申告をしたことは、当事者間に争いがなく、右事実によれば、八一四万九七九九円の雑収入計上もれがあることは明らかである。

(二)  原告は、原告が右配当金を除外して確定申告をしたのは、配当金を受領した後に右金員が行方不明になったためであり、本来であれば、右配当金を益金に計上し、同額の損金を計上すべきであったが、その手間を省いただけであると主張するが、<証拠>によれば、右配当金は受領された後にどのように処理されたか、どのように運用されたか不明であることが認められるものの、右事実のみによっては、右配当金と同額の損失が生じたということは到底できないし、他にこれを認めるに足る証拠が提出されていないことに鑑みると、右損失は生じていないというべきである。したがって、原告の右主張を採用することはできない。

4  平山機械関係の貸倒損失否認(被告の主張1(一)(4))について

(一)  原告が平山機械に対する債権六七八万七三五七円(内訳、仮払金一二万四九九九円、未収入金一七万七九九九円、受取手形六四八万四三五九円)について貸倒れの事実があったとしてこれを損金に算入していたこと及び原告が訴外宮下に対して右債権を譲渡する旨の意思表示をしたことは、当事者間に争いがない。

(二)  ところで、原告は、右債権譲渡の意思表示は通謀虚偽表示である旨を主張するので検討するに、<証拠>によれば、訴外宮下は、昭和四九年四月一日に、平山機械の代表者であった平山徳二ほかの者から裁判上の和解によって取得した目黒区碑文谷五丁目二二一番一五の土地及び同土地上の建物を有限会社汎洋宏産に譲渡したこと、訴外宮下は、同人の昭和四九年分の所得税の確定申告において、原告から譲り受けた平山機械に対する債権八八二万七二一五円を右不動産の取得額に計上して譲渡所得の額を算出していたこと、昭和四九年ころ、原告の平山機械に対する債権は、右の八八二万七二一五円以外にはなかったこと、被告は、右債権譲渡について対価の授受が行われていなかったので、原告から原告の役員である訴外宮下に対して役員賞与の支給があったものと認定し、源泉所得税の賦課決定をしたが、原告は、右決定について不服申立てをしていないこと、以上の事実を認めることができ、右認定の事実によれば、右債権譲渡が通謀虚偽表示でないことは明らかである。

なお、原告代表者は、書類上は種々書いたかもしれないが、実質的には原告から平山機械に対する債権の譲渡を受けたことはない旨を供述するが、右供述は前記認定の事実に照らして採用することができない。したがって、原告の右主張は理由がない。

(三)  右に判示したところによれば、原告の平山機械に対する六七八万七三五七円の債権は、原告が債権放棄の通知をしたと主張する昭和四九年四月二三日以前に訴外宮下に譲渡されていたことが明らかであるから、右六七八万七三五七円の損金算入を否認し、右金額を所得金額に加算すべきである。

5  関東鋼管及び高晴工業関係の貸倒損失否認(被告の主張1(二)(2)及び同1(三)(2))について

(一)  被告の主張1(二)(2)のうち、原告が関東鋼管に対し昭和四八年五月二〇日に二〇〇万円、同月三〇日に五八〇万円、同年六月三〇日に一四〇〇万円の合計二一八〇万円を貸し付け、その見返りとして同年七月三一日に受領した本件第一約束手形が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していたこと、同1(三)(2)<1>のうち、原告が関東鋼管に対する貸付金二〇〇〇万円の見返りとして同社から受領した本件第二約束手形が不渡りとなり、貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していたこと、原告が兼松江商から本件譲受債権を譲り受けたこと、原告が右債権の担保として関東鋼管の代表取締役訴外竹森の所有する石原町の土地建物に本件根抵当権を設定していたこと、原告が昭和五〇年七月八日付けの前橋地方裁判所に対する右土地建物の競売手続の開始の申立てを初めとする右債権の取立てをめぐる一連の訴訟においても関東鋼管に対する債権の存在を主張しており、右訴訟が当期末現在紛争中であったこと及び右二〇〇〇万円のうち一〇〇万円については貸倒れが発生していないこと、同1(三)(2)<2>のうち、原告が関東鋼管に対する昭和四八年七月六日付けの貸付金五〇万円について回収不能を理由に貸倒損失に計上していたこと並びに同1(三)(2)<3>のうち、原告が高晴工業から貸付金三七八一万五五二八円の見返りとして昭和四八年七月三一日に受領した本件第三約束手形及び昭和四八年九月三〇日に受領した本件第四約束手形が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなったとして右貸付金相当額を貸倒損失に計上していたことは、当事者間に争いがない。

(二)  原告と関東鋼管及び高晴工業との関係について

まず、原告と関東鋼管及び高晴工業との取引ないし貸借の経緯について検討するに、右当事者間に争いがない事実、<証拠>を併せると、以下の事実を認めることができる。

(1) 関東鋼管は、鋼材の加工、販売を業とする会社であり、高晴工業は、関東鋼管の加工部門を担当するために設立された会社で、関東鋼管の代表取締役であった訴外竹森の妻竹森ミツ子が代表取締役を勤めていた。

(2) 関東鋼管は、昭和四八年四月ころ、住金物産株式会社(以下「住金物産」という。)からエスカモービルという移動式の脚立を製造するよう注文を受け、関東鋼管と高晴工業で右製品を製造していた。ところが、そのころ関東鋼管の取引先の速水商会が倒産するという噂が流れたため、関東鋼管の業績は悪化し始めた。そのため、住金物産は、訴外宮下に対して、関東鋼管、高晴工業の経営を助けるとともに、将来関東鋼管、高晴工業が倒産した場合には新たに会社を設立してエスカモービルの製造を行うように指示し、訴外宮下は、右指示に従い、関東鋼管、高晴工業の経営に関与するようになった。

(3) 兼松江商、原告、関東鋼管、訴外竹森、高晴工業及び竹森ミツ子は、昭和四八年四月一〇日付けで、原告は兼松江商から石原町の土地建物に設定されていた極度額二〇〇〇万円の本件根抵当権及び本件根抵当権の被担保債権たる同社の関東鋼管に対する本件譲受債権の譲渡を受けること、訴外竹森、高晴工業及び竹森ミツ子は関東鋼管の原告に対する右債務を併存的に引き受けることなどを内容とする契約を締結し、原告は、昭和四八年六月二九日に、右根抵当権の移転及び債権譲渡の対価として、兼松江商に九七〇万円を支払った。

(4) 昭和四八年五月二〇日ころから関東鋼管が倒産するという噂が流れたが、右噂どおり同社は昭和四八年六月五日に第一回目の手形不渡りを出し、同月九日には銀行取引停止処分を受けて倒産し、以後事業を行っていない。関東鋼管倒産後も高晴工業では訴外宮下が実質的な代表者となって、関東鋼管及び高晴工業所有の機械等を使用してエスカモービルの製造を続けたが、高晴工業も同年八月二七日に第一回目の手形不渡りを出し、同年九月二八日には銀行取引停止処分を受けて倒産した。なお、その間、訴外宮下は、高晴工業の原材料費、外注費、給与等の支払を行う一方で、住金物産からエスカモービルの売買代金として少なくとも一二〇五万〇一五〇円の支払を受けた。また、関東鋼管が倒産した後一週間くらいの間は、訴外宮下が同社の社印及び実印を預かっていたし、同年六月一七日から同年九月二五日までの間は、住金物産ないし訴外宮下が高晴工業のゴム印及び実印を所持していた。

(5) 原告は、昭和五一年四月五日に、関東鋼管に対して、同社は本件第二約束手形を振り出したと主張して、右約束手形金の支払を求める訴えを提起した(前橋地方裁判所高崎支部昭和五一年(手ワ)第二四号事件)が、関東鋼管は、右約束手形は偽造である旨を主張して、原告の請求を争った。一方、訴外竹森は、原告に対して、本件根抵当権の被担保債権は弁済により消滅したと主張して、本件根抵当権の抹消を求める訴えを提起した(同支部昭和五一年(ワ)第一三四号事件)が、原告は、右弁済の事実を否認して、訴外竹森の請求を争った。そして、右各訴訟の審理の過程において、原告は関東鋼管ないし高晴工業に対して八〇〇〇万円強の債権を有すると主張したのに対し、関東鋼管は右主張を争うとともに、原告に対して七九〇〇万円の債権を有すると主張していたが、担当裁判官の勧めにより、昭和六〇年一二月二四日に本件和解条項を内容とする本件和解が成立し、右各訴訟は終了した(昭和六〇年一二月二四日に本件和解条項を内容とする本件和解が成立したことは、当事者間に争いがない。)。

以上の事実を認めることができる。

(三)  本件和解について

本件和解が、原告と関東鋼管及び高晴工業らとの間で被告が貸倒損失を否認している債権の存在及び原告が右債権のうち二〇〇〇万円を除いてその余の債権を既に放棄していることを確認するという内容を含んでいることは明らかであるところ、原告は、本件和解の内容に従って課税すべき旨を主張するので検討するに、裁判上の和解は裁判官及び裁判所書記官立会いの下にされた当事者の陳述に基づいて成立するものではあるが、裁判官及び裁判所書記官は必ずしも和解の内容が事実に符合するか否かを検討するわけではなく、当事者の合意に従った内容の和解を成立させるものである(このことは当裁判所に顕著である。)から、裁判上の和解が成立したからといってその内容が事実に符合するということはできず、結局、裁判上の和解が成立したということも事実認定の一つの資料たるに過ぎないものというべきである。

(四)  関東鋼管に対する二一八〇万円の貸倒損失(被告の主張1(二)(2))について

原告は、関東鋼管に対して昭和四八年五月二〇日に二〇〇万円、同月三〇日に五八〇万円、同年六月三〇日に一四〇〇万円を貸し付け、その見返りとして同年七月三一日に受領した本件第一約束手形が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなったと主張するのに対し、被告は右の貸付けを行ったとの事実及び本件第一約束手形振出の事実は認められないと主張するので、この点について検討する。

<証拠>によれば、原告の元帳の貸付金勘定には、原告主張のとおり関東鋼管に対して貸付けを行った旨の記載があることが認められ、また、<証拠>によれば、原告が本件第一約束手形(<証拠>の三通の約束手形のうち額面二一八〇万円のもの)を所持していること及び右約束手形が不渡りとなったことが認められる。そして、本件和解において関東鋼管が原告主張の債権の存在を認めていることは本件和解条項の内容から明らかである。

しかしながら、<1><証拠>によれば、原告の会計伝票上、昭和四八年五月二〇日の貸付けは訴外富昭一からの借入金で、同月三〇日の貸付けは反町某からの借入金三八〇万円及び汎洋宏業からの借入金二〇〇万円で行われたとされているが、訴外富昭一は被告に対して昭和四九年九月一二日現在原告に対する貸付金はない旨を記載した回答書を送付しており、また、汎洋宏業の振替伝票上では同社は昭和四八年九月一日に反町忠雄から二〇〇万円を借り入れて、これを原告に貸し付けたとされているが、原告の帳簿上は右同日に借り入れをしたとの記載がないことが認められること、<2>前記(二)で認定したとおり、関東鋼管は昭和四八年四月ころから業績が悪化し、同年五月二〇日ころには倒産の噂が流れ、現に同年六月五日には第一回目の手形不渡りを出し、同月九日には銀行取引停止処分を受けて倒産し、以後事業を行っていなかったのであるが、原告の主張によれば、原告は関東鋼管が倒産するとの噂が流れていた時期に七八〇万円を、倒産後に一四〇〇万円を同社に対して貸し付けたということになるのであって、<証拠>によって認められる、同年五、六月ころから原告の資金繰りは楽ではなかったとの事実も併せ考えると、このようなことは極めて異常であるといわざるを得ないこと、<3><証拠>によれば、昭和四八年六月中旬に開催された関東鋼管の債権者会議の資料には、原告が関東鋼管に対して七八〇万円の貸付金債権を有する旨の記載がないことが認められること、<四>前記(二)で認定した事実によれば、訴外宮下は関東鋼管が昭和四八年六月九日に銀行取引停止処分を受けた直後にそのことを知ったと推認することができるところ、原告の主張によれば、原告は本件第一約束手形を同年七月三一日に受領したというのであるから、訴外宮下は関東鋼管が銀行取引停止処分を受けたことを知りながら右約束手形を受領したといわざるを得ないうえ、<証拠>によれば、右約束手形は、新潟相互銀行高崎支店が高晴工業に対して交付した手形用紙を使用して作成されたものであり、原告が所持する高晴工業が振出名義人となっている本件第三及び第四約束手形と手形番号が続いていること及び手形用紙の交付先と異なる者が振出人となっている手形が支払呈示されても形式不備を理由に支払が拒絶されることが認められるのであって、これらの事実に鑑みると、関東鋼管が本件第一約束手形を振り出したというにはあまりに不自然であるし、前記(二)で認定した事実によれば、訴外宮下は昭和四八年六、七月ころ高晴工業の手形用紙及び関東鋼管の社印、実印を自由に使用することができたと推認することができること、<5><証拠>によれば、関東鋼管の代表者であった訴外竹森は、被告の調査担当者ないし被告指定代理人に対して、関東鋼管は原告が兼松江商から譲渡を受けた一〇〇〇万円の債権の外には原告に対して債務を負っていないし、本件第一約束手形を振り出したこともないと供述していることが認められること、以上の事情に照らすと、原告の元帳の貸付金勘定の右記載をたやすく採用することはできないし、関東鋼管が本件第一約束手形を振り出したということもできない。また、右に述べたところに、前記(二)で認定した本件和解に至る経緯を併せ考えると、本件和解の前記部分は事実に符合するものではないといわざるを得ない。そして、他に原告主張の債権の存在を認めるに足る証拠が提出されていないことに鑑みると、原告主張の債権は存在しなかったというべきである。

したがって、二一八〇万円の損金算入を否認し、右金額を所得金額に加算すべきである。

(五)  関東鋼管に対する二〇〇〇万円の貸倒損失(不渡手形分)(被告の主張1(三)(2)<1>)について

(1) 右の二〇〇〇万円のうち一〇〇万円について貸倒れが発生していないことは、前記のとおり当事者間に争いがない。

(2) 被告は、原告が兼松江商から債権譲渡を受けた本件譲受債権については原告がこれを有していたことを認めるものの、その余の債権についてはその発生を否認するのに対して、原告は、主位的には、本件第二約束手形金債権二〇〇〇万円及び右金額を限度とする原因債権を取得したと主張し、予備的に、汎洋宏業に対して一九〇〇万円の求償権を取得したと主張するので、まず、原告が原告主張の債権を取得したかどうかについて検討する。

<1> 本件第二約束手形金債権について

<証拠>によれば、関東鋼管の代表者であった訴外竹森は、被告の調査担当者ないし被告指定代理人に対して、原告が兼松江商に対して九七〇万円を支払って同社の関東鋼管に対する債権の譲渡を受け、石原町の土地建物の一番抵当権者となった際に、訴外竹森は、訴外宮下から原告が関東鋼管の債権者であることを示すために手形を一枚渡して欲しいと依頼され、これを了承して関東鋼管の社印、実印を押印し、その余の部分は白紙で約束手形一通を訴外宮下に手渡した旨を供述していることが認められるところ、前記(二)で認定したとおり、原告は兼松江商に対して九七〇万円を支払って同社の関東鋼管に対する債権の譲渡を受け、石原町の土地建物の一番抵当権者となったのであるから、この点に関する訴外竹森の供述は事実に符合していること、前記(二)で認定したとおり、関東鋼管は昭和四八年六月九日には銀行取引停止処分を受けたのであるが、それにもかかわらず本件第二約束手形の振出日が昭和四八年九月二〇日と記載されていること(本件第二約束手形の振出日の記載については当事者間に争いがない。)、<証拠>によれば、原告の昭和五〇年一月期の確定申告書に添付された決算報告書の不渡手形の内訳書には本件第二約束手形の記載がないことが認められること並びに後記のとおり、本件第二約束手形の原因債権として想定し得るのは原告が兼松江商から譲渡を受けた本件譲受債権だけであることに鑑みると、訴外竹森の右供述は信用することができるものというべきである。原告代表者は、原告が関東鋼管に対して資金を出したので本件第二約束手形を受け取った旨を供述するが、右供述は、右判示の事実に照らし採用できない。また、本件和解条項によれば、関東鋼管は、本件和解において、本件第二約束手形の振出を認めているかのごとくであるが、右判示の事実及び前記(二)で認定した本件和解に至る経緯に照らすと、右和解の内容が事実に符合するということはできない。したがって、本件第二約束手形が有効な約束手形であるということはできず、関東鋼管は右手形金債務を負っていないというべきである。

<2> 本件第二約束手形の原因債権について

原告が兼松江商から本件譲受債権を譲り受けたことは、前記のとおり当事者間に争いがない。

原告は、右債権のほかに、連帯した関東鋼管等のために昭和四八年六月二五日ころから同年一○月二五日までの間に、少なくとも一〇三〇万円を超える立替金若しくは貸付金を支払い、同額の金銭支払請求権を取得し、また、連帯した関東鋼管等に対して同年四月二〇日及び同月三〇日に各五〇〇万円を貸し付けた旨を主張し、右立替金支払の事実を立証する証拠として領収証等<証拠>を提出するが、右領収証等に係る支払を原告がしたことを認めるに足る証拠はない(原告代表者は、右領収証等に係る支払は原告が関東鋼管に代わってしたものである旨を供述するが、右供述は具体性を欠くものであって採用することができない。)。そして、他に原告が原告主張の立替金を支払ったこと若しくは関東鋼管に対する貸付けをしたことを認めるに足る証拠が提出されていないうえ、<証拠>によれば、前記の関東鋼管の債権者会議の資料に原告主張の債権の記載がないことが認められ、また、前記のとおり、関東鋼管の代表者であった訴外竹森は被告の調査担当者ないし被告指定代理人に対して、関東鋼管は原告が兼松江商から譲渡を受けた一〇〇〇万円の債権の外には原告に対して債務を負っていないと供述しているのであって、これらの事実に照らせば、原告主張の債権は発生していないというべきであり、原告の右主張を採用することはできない。

したがって、原告が関東鋼管に対して取得した債権は兼松江商から譲渡を受けた本件譲受債権だけであるというべきである。

<3> 汎洋宏業に対する求償権について

原告は、原告と連帯関係にあった汎洋宏業は関東鋼管所有の機械を散逸させたりしたことによって一九〇〇万円の損害賠償債務を関東鋼管に対して負っていたところ、原告と関東鋼管は、右一九〇〇万円の債権と原告が関東鋼管に対して有していた二〇〇〇万円の債権とを対当額で相殺した結果、原告は汎洋宏業に対して一九〇〇万円の求償権を取得したと主張し、本件和解条項によれば、原告と関東鋼管は、本件和解において、右損害賠償請求権の発生及び相殺の事実を確認していることが認められる。しかしながら、本件和解が成立したことを除けば、汎洋宏業が右機械を散逸させたことを窺わせる証拠は全く提出されていないこと及び本件和解には右機械を散逸させたとされる汎洋宏業が加わっていないことに鑑みると、汎洋宏業が関東鋼管の機械を散逸させたと認めることは到底できないのであって、このことに前記(二)で認定した本件和解に至る経緯も併せ考えると、この点に関する本件和解の内容は事実に符合しないものというべきである。したがって、原告の右主張を採用することはできない。

(3) 次に、原告が兼松江商から譲渡を受けた本件譲受債権が当期において貸倒れになったかどうかについて検討するに、原告が右債権の担保として訴外竹森の所有する石原町の土地建物に本件根抵当権の設定を受けていたこと及び原告が右債権の取立てをめぐる一連の訴訟において関東鋼管に対する右債権の存在を主張し、右訴訟が当期末現在係争中であったことは、前記のとおり、当事者間に争いがないのであって、右事実によれば、右債権は当期末には貸倒れになっていないことは明らかである。

(4) したがって、二〇〇〇万円の損金算入を否認し、右金額を所得金額に加算すべきである。

(六)  関東鋼管に対する五○万円の貸倒損失(現金による貸付金分)(被告の主張1(三)(2)<2>)について

原告は、関東鋼管に対して昭和四八年七月六日に五〇万円を貸し渡したと主張するのに対して、被告は右貸付けを否認するので、この点について検討する。

本件和解条項によれば、原告と関東鋼管は、本件和解において、右債権の発生を確認していることが認められる。しかしながら、原告が右の貸付けの証拠として提出する<証拠>は、昭和四八年七月六日付けの住金物産から関東鋼管宛の五〇万円の領収証であり、右領収証には現金にて立替支払と付記されているが、右の五〇万円を原告が支払ったことを認めるに足る証拠はないうえ、前記認定のとおり、関東鋼管は昭和四八年六月九日に銀行取引停止処分を受けて倒産し、以後事業を行っていなかったのであるから、仮に、右領収証記載のとおり支払がされたとすれば、その支払は関東鋼管が倒産前に負担していた債務に対するものであるといわざるを得ないが、原告が関東鋼管倒産後に右のような債務を立て替えて支払う合理的理由を見いだすことはできないのであるから、右領収証をもって原告主張の貸付けがあったと認めることはできないし、このことに、前記のとおり、訴外竹森が被告の調査担当者ないし被告指定代理人に対し、関東鋼管は原告が兼松江商から譲渡を受けた一〇〇〇万円の債権の外には原告に対して債務を負っていないと供述していること及び前記(二)で認定した本件和解に至る経緯も併せ考えると、この点に関する本件和解の内容が事実に符合しているということは到底できない。そして、他に原告主張の貸付けを認めるに足る証拠が提出されていないことに鑑みると、原告主張の貸付けはなかったと認めるのが相当である。

したがって、五〇万円の貸倒損失を否認し、右金額を所得金額に加算すべきである。

(七)  高晴工業に対する三七八一万五五二八円の貸倒損失(不渡手形分)(被告の主張1(三)(2)<3>)について

原告は、高晴工業から貸付金三七八一万五五二八円の見返りとして昭和四八年七月三一日に受領した本件第三約束手形及び昭和四八年九月三〇日に受領した本件第四約束手形が不渡りとなり、右貸付金の回収ができなくなった旨を主張するのに対し、被告は原告が右貸付金を有するとの事実及び右二通の約束手形の振出の事実を否認するので、この点について検討する。

まず、原告の主張する貸金債権が発生したか否かについて検討するに、本件和解条項によれば、高晴工業は、本件和解において、原告から昭和四八年七月三一日に一七九一万八三九七円を、同年九月三〇日に一九八九万七一三一円を借り受けたことを認めているということができるが、<証拠>によれば、原告の元帳の貸付金勘定には右貸付金の記載がないことが認められること、<証拠>によれば、高晴工業の代表取締役であった竹森ミツ子は被告の調査担当者ないし被告指定代理人に対して、高晴工業は原告から貸付けを受けていないと供述していることが認められること、前記認定のとおり、昭和四八年五、六月ころから原告の資金繰りは楽でなかったのであるが、それにもかかわらず、原告が高晴工業倒産後(前期(二)で認定したとおり、高晴工業は昭和四八年九月二八日に銀行取引停止処分を受けて倒産した。)に同社に対して一九八九万七一三一円もの金員を貸し付けるということは極めて不自然であることに照らすと、本件和解の右部分が事実に符合するということは到底できないものというべきである。なお、<証拠>によれば、原告の元帳の貸付金勘定には高晴工業に対する貸付金が記載されていることが認められるが、同証言によれば、右貸付金のうち約束手形あるいは小切手で貸し付けられたと記載されていたものについて調査したところ、右約束手形あるいは小切手を取り立てたのは機械、車両等の業者であり、高晴工業には右約束手形あるいは小切手が渡っていなかったことが認められるのであるから、原告の元帳の貸付金勘定の右記載を採用することはできない。そして、他に原告主張の貸金債権の発生を認めるに足る証拠が提出されていないことに鑑みると、右債権は発生していないというべきである。

次に、高晴工業が本件第三、第四約束手形を振り出したか否かについて検討するに、本件和解条項によれば、高晴工業は、本件和解において、本件第三、第四約束手形を振り出したことを認めているかのごとくである。しかしながら、前記5(二)で認定した事実によれば、訴外宮下は高晴工業が昭和四八年九月二八日に銀行取引停止処分を受けた直後にそのことを知ったと推認することができるところ、原告の主張によれば、原告は本件第四約束手形を同月三〇日に受領したというのであるから、訴外宮下は高晴工業が銀行取引停止処分を受けたことを知りながら右約束手形を受領したということになるが、このようなことは通常はあり得ないと考えられること、<証拠>によれば、高晴工業の代表取締役であった竹森ミツ子は、被告指定代理人に対して、本件第三、第四約束手形を振り出したことはない旨を供述していることが認められること、前記5(三)に判示したとおり、本件第二ないし第四約束手形は新潟相互銀行高崎支店が高晴工業に対して交付した手形用紙を使用して作成されたものであって、右三通の約束手形の手形番号は続き番号になっているのであるが、本件第二約束手形は関東鋼管が振出名義人となっており、しかも、関東鋼管が振り出したものとは認められないうえ、前記のとおり、原告が本件第三、第四約束手形の原因債権として主張する貸金債権は発生していないと認められること、前記5(二)で認定したとおり、昭和四八年六月一七日から同年九月二五日までの間は、住金物産ないし訴外宮下が高晴工業のゴム印及び実印を所持していたこと、以上の事情に照らすと、高晴工業が本件第三、第四約束手形を振り出したということはできないのであって、この点に関する本件和解の内容は事実に符合しないものというべきである。

したがって、三七八一万五五二八円の貸倒損失を否認し、右金額を所得金額に加算すべきである。

6  事業税認定損(被告の主張1(二)(3))について

後記のとおり、昭和四九年一月期の法人税の更正は適法であるところ、右更正に伴って昭和五〇年一月期に損金算入が認められる昭和四九年一月期の事業税の額を算出すると、別表四記載のとおり一九三万九〇八〇円となるから、右金額を所得金額から減算すべきである。

7  所得税額過大計上(被告の主張1(二)(4))について

<証拠>によれば、原告は、昭和五〇年一月期の確定申告に当たり、益金に算入すべき法人税額から控除される所得税額が三四万七一七八円であるにもかかわらず、これを三四万七一八〇円であるとして所得金額を計算していたことが認められるから、右の差額二円を減算すべきである。

8  敷金等の償却費相当額の収入もれ(被告の主張1(三)(3))について

原告が貸室賃貸借契約に基づき賃借人九名から別表五記載のとおり敷金等を受け入れたことは、当事者間に争いがなく、右当事者間に争いがない事実、<証拠>を併せると、原告は、右の賃借人九名との間で、賃貸借契約終了の際には右の敷金等の金額から別表五の償却費相当額欄記載の金額を控除して(他に当該賃貸借に関して生じた債務があればそれも控除して)その残額を返還するとの約定のもとに賃貸借契約を締結し、貸室を引き渡したこと及び賃貸借契約の始期は同表の契約日欄記載の日であり、原告はそのころ右の敷金等を受け入れていたことが認められるのであって、右認定の事実によれば、別表五の償却費相当額欄記載の金員は敷金等を受け入れた日に返還を要しない金員として確定したものというべきである。そうすると、右金員は、敷金等を受け入れた日に原告の自由に処分し得る趣旨の金員として授受されたものであり、権利金の実質をもつものであるというべきであるから、敷金等を受け入れた日の属する昭和五二年一月期の益金に計上すべきである。

なお、原告は敷金等の償却費相当額は賃貸借契約成立後における賃借人の賃借物の使用可能状態の継続に関して授受されるものであるから、賃貸借契約の終了時に収益として確定する旨を主張するが、右金員が原告主張のような性質のものであることを認めるに足る証拠はないから、原告の主張を採用することはできない。

9  繰越欠損金の過大控除額(被告の主張1(三)(4))について

原告が申告所得金額の計算にあたり、当期の所得金額から一六五〇万七七一七円の繰越欠損金を控除したことは、当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、前期までの更正によって昭和五二年一月期の損金に計上することができる繰越欠損金は六一一万一四五一円であることが認められるから、その差額である一〇三九万六二六六円を所得金額に加算すべきである。

10  まとめ

以上によれば、原告の所得金額は、昭和四九年一月期が一七二八万四六六六円、昭和五〇年一月期が一二九八万三七二六円、昭和五二年一月期が六九四四万五五三九円となるところ、本件各更正における原告の所得金額は右と同額であるから、本件各更正には原告の所得金額を過大に認定した違法はない。

三  本件各決定の適法性について

前記二で判示したところによると、原告は、昭和四九年一月期については、訴外林との間の虚偽の売買契約書を作成し、また、東京地方裁判所から競売事件の配当金を受領しているにもかかわらずこれを全額除外し、さらに、訴外宮下に譲渡した債権についてあたかも原告が債権者であるかのごとく仮装し、昭和五〇年一月期については、関東鋼管に対する貸倒損失二一八〇万円が存在するかのごとく仮装し、昭和五二年一月期については、関東鋼管に対する貸倒損失五〇万円及び高晴工業に対する貸倒損失三七八一万五五二八円が存在するかのごとく仮装したということができるのであるから、原告は課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し、その隠ぺいし又は仮装したところに基づいて確定申告書を提出したものというべきであるところ、被告は、右の仮装又は隠ぺいに対応する税額を対象として本件重加算税賦課決定をし、その余の税額を対象として本件過少申告加算税賦課決定をしたものであるから、本件各決定は適法である。

四  結論

よって、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宍戸達徳 裁判官 北澤 晶 裁判官 中山顕裕は転補のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 宍戸達徳)

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